請負契約書で契約を結ぼう

請負契約書の締結

請負契約書は重要な書類

建設業でよくあるのが「昔からの知人なので口頭契約して仕事もらってます」というような内容。確かに、請負契約は民法上、口頭契約でも成立するので紛争がなければ問題ありません。ただ、建設業許可を取得するにあたり、契約書等が必要になるのであるに越したことありません。また、もし紛争に発展してしまった場合に契約書で権利義務関係を明確にすることが出来ますので、やはりあったほうがいいのです。

請負契約書に記載する内容

  1. 工事内容
  2. 請負代金の金額
  3. 着工日と完成日(工期)
  4. 前払い金や出来高支払金の支払時期とその方法
  5. 工期や請負代金の変更があった場合の損害負担金などの算定方法
  6. 天災や不可抗力による変更とそれにとまなう損害負担金などの算定方法
  7. 価格変動による請負代金、工事内容の変更
  8. 第三者への損害賠償金の負担
  9. 発注者が資材提供や機械付与を行うときの内容と方法
  10. 検査と引き渡しの時期
  11. 完成後の請負代金の支払時期と方法
  12. 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときはその内容
  13. 履行遅延や債務不履行にともなう遅延利息などの損害金
  14. 契約に関する紛争の解決方法

このような内容を具体的に書面で取り交わし互いに署名することで契約が締結されます。もちろん、書類は2通作成し、発注者と請負者が双方が保管することになります。これらに印紙も貼らなけれればならないので出費がかさむことになります。ちなみに1千万円を超えると2万円の印紙税がかかります。

契約書以外に添付する書類

請負契約書以外に図面や仕様書、約款などで明確にしておくことが後のトラブルを防ぐことになります。いまいち分からないという方は国土交通大臣の諮問機関である中央建設業審議会で作成されている契約書を基準として見てみるといいと思います。(参考:建設工事標準請負契約約款

建設業の契約に関する判例

建設業においてトラブルがおきた判例をいくつか抜粋して紹介したいと思います。裁判になってしまえば証拠(契約書)がとても重要なことが分かると思いますので、今一度契約の在り方というものを事業者の方には見直してほしいと思います。

請負契約書がなかったばっかりに

A社とB社がY市に請負代金を払えといった裁判でY市が請負契約なんてしていないと争った判例があります。ざっくりした内容を書くと、A社とB社の主張は、A社とB社の事実上の代表Cが、Y市の当該契約担当者Eと工事現場に集まり、EからCに対して本件工事が発注されY市とA社及びB社との間で請負契約が締結されたと主張しました。

しかし、Y市はEはCに工事を発注していないし、前から不当に工事を受注していたCは従来通りEに圧力をかけ、工事の発注がなくても既成事実を作ってしまえば押し切れると思い工事を施工したと主張しました。よって、請負契約を結んでいないと言っている訳ですね。

裁判所の判断は、工事請負契約書、着手届、完工届等の必要書類が作成されていないこと、A社及びB社の主張事実に添う証人についてはY市の当該契約担当者Eの現地で契約締結されたとされる日にその現場に赴いたことすらないという証言から契約締結についての確定的判断をすることが困難であること、物証とされた証人の日記からもEが、本件工事の施工を了承してその発注をした事実を認めることができないことを踏まえ、原告らの代金請求を認めなかった。

他にも判示では、「Eは当時市の監査に関する中心人物のため、原告の主張のようにたやすく請負契約を結ぶとは考えにくい」「Eが排水溝設備を指示し、その指示に従って現に排水溝の整備がなされたと主張しているが、EがCらと本件工事現場付近に会ったという証拠がないし、排水溝の事実があるからといって請負契約締結の事実までをも認めることはできない」とされています。

必ずしも請負契約書があったら判決が変わっていたかというと違うかもしれませんが、第三者に請負契約があったと証明するためには書面が大事ということは伝わったと思います。また、建設業法19条で決められていますので本当は作成しておかなければならないのです。

報酬額を決めていない追加工事

A社が行った追加工事の一部が、当初の請負工事に含まれるか、別途の報酬額の定めのない請負契約に基づく追加工事か争われた判例です。そもそも請負契約において報酬額を定めていなくても契約の妨げにならないのかという話なんですが、それは妨げにはなりません。報酬額を決めていない請負契約の要件事実は3つです。

  • 請負契約の成立(契約日、仕事の内容)
  • 仕事の完成
  • 請求している報酬額が相当であること

そこでB社の主張は本工事に含まれる、含まれないとしてもA社は追加工事に関して無償で引き受けたと主張したようです。

裁判所の判断は、追加工事は本工事に含まれない。A社が追加工事を無償で引き受けたと認めることは無理だとのことです。まあ、そりゃ無償で引き受ける訳ないですよね。(笑)

このようなトラブルが起こさせない為にも必要項目を全て盛り込んだ契約書を締結しなければなりません。

まとめ

これらを読んで請負契約書で契約する重要さや契約内容を具体的に明記しておく大切さが分かったと思います。もとより建設業法を順守するのであれば契約書で契約を締結しなければなりません。自分を守る為にもトラブルを防止する為にも必ず契約書を結ぶようにしましょう!!

 

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